僕たちは連日貸し会議室にこもってブレインストーミングを続けた。
一体どうすれば英語力の真っ当な向上を図れるのだろう?
僕には、かなり具体的なイメージがあった。しかし、そのイメージをカリキュラムに落とすのは思ったよりも難しかった。語学習得に近道なんかない。そこをなんとか、1週間〜1ヶ月くらいの期間である程度身につけさせようと思ったら、よほどの工夫がいる。
近道は確かに存在しないが、「より良いやり方」は確かに存在するのだ。そして、この「より良いやり方」は果たしてどのようなものなのか、具体的に言葉にしていく必要がある。
最大のヒントはパートナーの中西くんだった。中西くんは5月に初めてのセブ留学し、2回目が9月で、合計2ヶ月しか英語に触れていない。まるっきりの初心者ではなかったが、「ペラペラ喋れる」からはほど遠かった。単語は少なく、出てくるメールも間違いだらけ。発音もかなりお粗末だった。
彼とのやり取りの中で、「ここを直したら相当よくなるな」と思うことはたくさんあった。
列挙してみよう。
- 母音の発音 音が正しく出ていないケースが多い。とくにaeの音はかなりまずい
- 子音の発音 舌の位置が定まっておらず、必要のないところで巻き舌になり、Rの音が入っている
- 発音する際に、大げさに頭が動く
- 語彙が少ない
- 時制の選択が適切でないことがある
- 英語での反応スピードが遅い
- 英文を書いた際、文章の構成に問題が多い
- 英文を書いた際、文法のミスが多い
これらはすべて中西くんという個人に起因するものではなく、そのまま日本における英語教育の問題点なのだ。ここに列挙した問題は、そのまま国際線CAとか、北米に住む駐在員の方にも見受けられる。10年アメリカに住んでも、中西くんと同様の問題を抱えたままの人はいくらでもいるだ。克服の仕方がわらないか、そもそも問題があることに気がついていないのだろう。
猛特訓
この1週間は中西くんにとってかなり過酷な1週間だったと思う。なにしろ連日朝から晩まで英語で会議なのだから、限界まで追いつめられる。僕も議論が白熱すると中西くんの英語のレベルを忘れて、ついフルスピードで話してしまった。彼はついていこうと頭をフル回転させ、1日が終わる頃にもう日本語さえまともに出てこないほど消耗していた。
僕にも同じ経験があった。初めてアメリカに住んだ時、アメリカの大学に通い始めた頃、アップル本社で働き始めた時期。かつて経験したことないほど消耗し、打ちのめされた。しかし、その時々に与えられたチャレンジの中でもがいていくと、徐々に、しかし確実に、新しい世界に対応していく能力が身についていくのだ。
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