山内宏泰
写真はいつ生まれた?——「浮世絵から写真へー視覚の文明開化ー」
写真術が日本にやってきたのは1850年代。 眼の前にあるものを正確に写し取る写真は、それ以前にものごとの様子や姿かたちをひろめていた浮世絵に代わる存在となります。写真の急速な浸透によって浮世絵の姿はだんだんと消えていきましたが、写真と浮世絵が同居していたおもしろい時代が長くありました。写真と浮世絵のいいところどりをした表現したり、両者を組み合わせてより早く、わかりやすく伝達する作品とその時代を、ぜひご覧ください。
《東都両国川開之図》歌川国貞 1856年
幕末から明治初期、文明開化のころというのは興味の尽きない時代ですね。政治経済文化、あらゆる位相でたくさんの変化が起きていて、歴史として眺めるわたくしたちはいいのですけれど、実際に渦中にいた人たちのたいへんさはいかばかりか。それに耐えて生き抜いたバイタリティには感服するばかりです。
さて、当時は視覚芸術の世界でも、大きな転換が起こりました。浮世絵の世界の縮小と、写真の勃興です。江戸時代を通して、浮世絵は、庶民による庶民のための芸術として、といいますか娯楽のひとつとして、大発展を遂げました。流行の役者の姿や美人画、名所図など、最先端の事象をすばやく版画にして流通させる、いまでいう雑誌のような役割を、浮世絵は果たしていたのですね。
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この連載について
山内宏泰
世に“アート・コンシェルジュ”を名乗る人物がいることを、ご存じでしょうか。アートのことはよく知らないけれどアートをもっと楽しんでみたい、という人のために、わかりやすい解説でアートの世界へ誘ってくれる、アート鑑賞のプロフェッショナルです...もっと読む
著者プロフィール
ライター。美術、写真、文芸その他について執筆。著書に『写真のフクシュウ 荒木経惟の言葉』(パイインターナショナル)『写真のフクシュウ 森山大道の言葉』(パイインターナショナル)『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)『写真のプロフェッショナル』(パイ インターナショナル)『G12 トーキョートップギャラリー』(東京地図出版)『彼女たち』(ぺりかん社)など。東京・代官山で毎月第一金曜日、写真について語るイベント「写真を読む夜」を開催中。東京・原宿のスペースvacantを中心に、日本写真を捉え直す「provoke project」開催中。
公式サイト:http://yamauchihiroyasu.jp/