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【座談会メンバー】
36歳主婦。ふだんは筋金入りのジャニオタだが、羽生善治四冠と森内俊之九段の名人戦をきっかけに「観る将」の世界へ。推している棋士は橋本崇載八段。
ブロガー。プロ棋士とコンピュータソフトが戦う団体戦「電王戦」をきっかけに、個性豊かな棋士たちに興味を持つ。推している棋士は斎藤慎太郎六段。
33歳会社員。ニコ生の「棋士人狼」をきっかけに「観る将」に。タイトル戦だけでなく順位戦まで幅広くチェックしているが、一番好きなのは羽生善治四冠。
羽生善治四冠という絶対的な存在
—— いろいろな棋士の方のエピソードをうかがって、ちょっと将棋が身近に感じられてきました。
イシイ でもやっぱり、将棋界について語るときは、羽生善治四冠のことを語らないわけにはいきません! 羽生先生のラスボス感は凄まじい。
もぐもぐ 今の将棋界は、羽生先生を中心にした神話、と見ると、ざっくり把握がしやすいですよね。
あじこ 羽生先生のことを他の棋士が語っている話を聞くのはすごく好き。たとえば渡辺明棋王が「羽生先生は個性がないから弱点がない」と言ったのって最高じゃないですか?
一同 (うなずく)
あじこ 仕事でもなんでも「どれだけ個性的になるか」勝負のところがありますよね。でも羽生先生はフラットで最強。なんか化け物みたいじゃない? イシイさんは羽生先生推しなんですよね。
イシイ はい! 羽生先生はふだんは優しくほがらかなのに、対局中に時折「鬼」のようなすさまじいオーラをまとわれることがあるんですよ。そのギャップにやられました。
特に、昨年の王座戦、豊島将之七段との五番勝負で最終局での羽生先生はすごかった。負ければタイトル失冠という大一番。難解な終盤戦で1分将棋に追い込まれた羽生先生は、ものすごい形相で盤上を凝視し、もがきながら苦しみながら、なりふり構わずに将棋を指していました。手が震えて駒をうまく置けないこともあったんです。その鬼気迫る姿に「人間ってこんなふうに生きられるんだ、これが見たくて私は将棋を見てるんだ」と胸をうたれました。
あじこ みんな羽生善治という鬼と戦いたいし、倒したいという気持ちで動いている世界……。羽生先生の存在って、本当に漫画みたい。七冠制覇したときだって、初めは谷川浩司九段との王将戦に敗れて制覇できず。みんなが「七冠はまだまだ先か」モードだったのに、その翌年に残りの6タイトルを全部防衛して谷川先生に勝って七冠とってるんですよ!?
ポール 漫画のネームでそんな展開にしたら、確実に編集さんに「盛りすぎです」と言われてしまいそうですね。