まずはYAZAWAの話
矢沢永吉は20代後半、世間で認められている自分がイヤになり「ヤザワ? ヤザワがナンボのもんよ」と苛立ったこともあったが、40代半ばで「そうか、俺はヤザワなんだ」とふと思い、50代に入ってから「『みんなの矢沢永吉』なんだ」と感じるようになったという(『イチロー×矢沢永吉 英雄の哲学』)。売れっ子の自分を嫌いになり、その後で自分を取り戻し、やがて自分は自分だけのものではなく、みんなのものだと気付く。特に矢沢のファンというわけでもないのだが、こうして、自分の道程をその時々の純粋な心持ちに従い突き進んできた姿勢に惹かれる。
「自分の価値を高めるための心掛け」、これはいつだって本屋さんの一角を牛耳っているメソッドだが、それらはあくまでも間接的に成されるべきであり、声を発して直接的に自分の価値を開けっ広げにするのは慎むべき、という見解は強まっていく。一方で矢沢は時折、「矢沢が何をしてくれるのか楽しみ」という形容を使う。矢沢自身が矢沢に期待し、周囲のファンが更なる期待を向けるという「期待の重層性」が、カリスマであり続ける理由にも繋がってくると思うのだが、この手の表現者とファンの重層性は、まったくの外部から見れば「宗教的」と半笑いで済まされてしまうことも少なくない。
「金目当てで結婚するからこうなる」とは
自分で自分をことさら持ち上げてくる芸能人に手厳しいのは今に始まったことではないが、自分で自分を持ち上げるようにして、こんな風になれたから「みんなにお裾分けしたい」と慮る善意が様々なビジネスとして結実する現在、そこで調節具合を間違えて心象を損なうと、「ホントに金儲けが好きだな」という文句が降りかかることになる。この数年、その文句をおおよそ背負ってきたのが紗栄子である。タレントやアナウンサーがスポーツ選手と結婚し、彼の食生活のサポートをするためにジュニアアスリートフードマイスターの資格をとったりすると付け入る余地のない賞賛を浴びるが、結婚生活が破綻した途端に、付け入る余地が女性側に生まれ、「金目当てで結婚するからこうなる」という放射をいたずらに浴びる場合がある。
ダルビッシュ有と別れた紗栄子はその放射をいくらでも浴びてきたが、その放射をエネルギーに変え続ける力を持つ。先日、資産2000億円といわれるZOZOTOWN社長との熱愛が発覚、フジテレビの安藤優子アナに「紗栄子さんは2000億円と付き合ってる感じ」とまで言わせた。ZOZOTOWNで服を買ったことはないが、彼のオフィスのドアには、どデカく「愛」と一文字だけ書かれていると知り、アクセスがますます遠のく現在。相手の資産だけでなく、イケイケっぷりも込みで、交際自体が闇雲に叩かれていく。
「ドラマに出てほしい」という声に答える
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