「ジェーンダ・レスーの選択的未婚時代」?
朝6:55——混みはじめた電車の中、私は寝ぼけまなこで、週刊誌『AERA』の中吊り広告の“一行コピー”を眺めていた。
あっ! 最近流行りの「ジェンダーレス」とコラムニストのジェーン・スーさんをかけているのか。今週のコピーは悪くない。っていうか、時代の気分を言い当てている。
ジェンダーレスとは、ファッションを中心に流行り始めた言葉で、ユニセックス(男女兼用)とも少し違う。男性は女性らしく、女性は男性らしいファッションを着るムーブメントのことだ。抽象的に言うならば、「男女の境界線を越えること」になるだろうか。
でも、それってファッションや見目麗しい絶食系男子※のことだけじゃない。いわゆる普通の女でも、40超えれば、自他ともに認められる感覚だ。
仕事場もプライベートも、男とか女とかを超えていくのは普通のことだもの。ジェーン・スーさんみたいに、知性とユーモアと絶妙なバランス感覚をもって男にも女にも媚びないトークができる40女だっている。「男だから、女だから、こう生きねば!」なんて時代はとうに過ぎ去ったし、既婚も未婚も全然ありだ。
※2015年の急上昇トレンド「ジェンダーレス男子」って?|Spotlight
でもなぁ。「結婚しないと老後は孤独死だよ」なんて不用意なアドバイスや「ひとりは寂しくないの?」なんてマイルドなハラスメントは止まない。別に結婚しないと決めたわけじゃないけれど、ひとりも楽しいし、大切な人や譲れないものもある。でも、そんなことを自ら言うと、強がっているように思われるから面倒くさい!
私は雑誌の中身も読まないうちから、思いを巡らせた。
“婚活”に失敗し続けて、婚活疲労外来へ——。
『AERA』は、女性誌ではない。ラテン語で“時代”という名の通り、いつも時代を切り取るジェンダーレスな週刊誌といえる。そして、「働く女性 5つの壁」、「『子供が欲しくない』は人に非ずか」などキャリアウーマンむけの特集が多く、すっきりとしたデザインや写真の美しさもあって、ファッションよりも社会に興味を抱く女性読者がたくさんいる。
特集のタイトルもインパクトがあるけれど、その週の社会の世相をダジャレで表す、一行コピーはつい見てしまう。ちなみに冒頭のコピーは、私が創った“AERA”風です。いつも勝手にごめんなさい(笑)。実際の一行コピーにはもっとインパクトがある。
“風と共に去りリーマン”(2008.9.29)とか、“ザンゲしローニ監督”(2014.6.23)なんてダサさもふくめて名コピー、珍コピーが数多ある。
AERAには、流行りを生み出し、世論を先導してやろうという野心が感じられる。
近年、AERAが先導して、社会現象となった言葉は“婚活”だろう。
もともとは、社会学者の山田昌弘氏が提唱、ジャーナリストの白河桃子氏との共著『「婚活」時代』から生まれたものだが、雑誌で最初に特集が組んだのがAERAだった。
“婚活”ブームはあっという間に世に浸透し、“努力しないと結婚できない時代”である認識を広めることに一役買った。
しかし、“早く結婚せねば”というムードの煽りを受け、懸命に婚活してもうまく行かない男女は、自分を見失い、心身を崩した人も多く、“婚活疲労外来”なるメンタルクリニックも出現した。
“結婚はコスパが悪い”から“嫌婚派”になる?
そんなAERAが2015年に打ち出したのが、「結婚はコスパが悪い」特集だ。