伝説めいたライフヒストリーを持つアーティストというのは、古今東西たくさんいますね。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロにはじまり、ゴッホにピカソといったところも派手なエピソードをあれこれ抱えております。フィクション、ノンフィクションを問わず、そうした芸術家を主人公にした映画も、たくさんつくられてきました。個性的なキャラクターを無理せず打ち出せるのですから、題材にしたくなる気持ちはよくわかりますね。
こちらはドキュメンタリーですが、新たな芸術家映画がひとつ誕生し、上映がはじまっておりますよ。『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』と題された作品です。
ヴィヴィアン・マイヤー。この名を聞き覚えのある人は、あまり多くないはず。知っているとすれば、かなりの写真好きでしょうね。でもこの名前、覚えておいて損はありませんよ。いまのところの知名度は低くとも、今後どんどん注目度が高まるのはまちがいなしですから。
すでに没している彼女、生前はまったくの無名でした。写真家として見出されるのは、偶然のきっかけによるものです。2007年のこと、米国シカゴに住む男性が大量の古い写真ネガをオークションで競り落とします。一部をインターネット上にアップすると、それを目にした人たちから熱い支持が集まります。
Ⓒ Vivian Maier_Maloof Collection
Ⓒ 2013 RAVINE PICTURES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
そんなにすごい写真家の作品だったのかな。男性はネガの持ち主の名、ヴィヴィアン・マイヤーを検索してみますが、何もヒットせず、情報は得られません。しばしの時を経て、あらためて調べてみると、彼女の死亡記事がヒットしました。読めば、写真家だったなどという話はどこにもなく、乳母として生涯を終えた女性だったといいます。
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