「これは泣ける!」
という言葉、このところ映画や小説の煽り文句でよく見かけますよね。たしかに泣くにしろ笑うにせよ、作品に触れて直接的な反応が自分のなかに生まれるというのは、なんとも楽しいことです。
ふと、おもいます。そういえばアート作品で、「泣ける!」「笑える!」「驚きと恐怖の連続!」などと惹句がつくものは、あまり見かけないですよね。なぜなのでしょう。
アートは気取った気分に浸れるものであって、触れたからにはもっと高尚な気分にならねばならぬといった先入観があるのでしょうかね。もしくは、ストーリーが明確な映画や小説にくらべて、アートは抽象的な印象を受け取ることになりがちなので、喜怒哀楽といったはっきりした感情につながりづらいのかもしれません。
それでも、たまには出合うのです。気持ちを大きく揺さぶられ、直接的な感情を強く喚起させられる作品に。そんな展示が、東京・田端にあるギャラリー「OGU MAG」で催されております。「あわい 仲田絵美写真展」です。
仲田絵美は、2010年代に入ってから精力的に作品を発表し続けている写真家です。ちょうど写真集『よすが』(赤々舎)が刊行されたばかりで、それに合わせて個展も開催しているのです。
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