ファンの想像力を奪ったのは僕かもしれない—vol.4

野球の道の断念、2度の入門テスト不合格、業界全体の人気低迷、意識不明の重体……何度も挫折と失敗を繰り返しながらも自らを「100年に一人の逸材」と呼びつづけ、新日本プロレス「奇跡のV字復活」の立役者となったプロレスラー棚橋弘至選手。その哲学が詰まった新刊『全力で生きる技術』の刊行を記念してプロレスキャスターの三田佐代子さんを聞き手に行われた、cakes独占インタビュー第四弾。スター選手なのに意外にも「自信がないから頑張れる」と語る棚橋選手。また、エースならではのファンへの細やかな気遣いなどを伺いました。

グローブに謝っていた少年時代

— 棚橋選手の思う、「良いプロレスラー」の条件ってなんなんでしょう。

棚橋弘至(以下、棚橋) 条件というより、僕の理想型はダイナマイト・キッドです。

— 日本では初代タイガーマスクとの名勝負が有名ですが、その後アメリカのWWFでも活躍し、多くの選手に影響をあたえた伝説のレスラーですね。『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えられたのか』でも名前が挙がっていました。

棚橋 『PURE DYNAMITE』っていう自伝を読んだんですけど、彼は背が低いのをカバーするために、ステロイド剤を打ち続けていたんですよね。今は車いす生活になっているけど……。彼は“明日”を見ていなかったんです。今ここで最高のパフォーマンスができればいいと思って、目の前の一試合にひたすら命をかけていた。それがレスラーとしての理想ではあります。でも……。

— でも。

棚橋 ステロイドなんて使わなくてもすごい試合はできるよ、ギリギリのところまで行けるよ、っていうことを僕は証明していきたいですよね。

— 「明日のことを考えない」っていうのもかっこいいですけど、そうは言っても明日のことだって考えてほしいとも思うんですよね。だってそれで好きな選手がリングに上がれなくなったら悲しむファンがたくさんいるわけですし。年間百試合、全て高いクオリティでやっていかなければいけないのがプロレスラーであり、棚橋選手はそれを体現してきた存在だと思います。

棚橋 そのつもりです。僕はプロレスラーのそういうところに憧れていたんですよ。年間百試合以上して、どんなにすごい戦いをしても、次の日けろっとしていたりするじゃないですか。「こいつらすげえなあ」と。そういうプロレスラーになれたら、俺も自分に自信が持てるだろうなって。

— えっ、自信がなかったんですか?

棚橋 ぜんっぜん自信のない子どもでしたよ。野球少年だった頃なんて、僕、野球のグローブに謝ってましたからね。「ごめんな、俺みたいな奴が買ったばっかりに……もっと上手い奴が買ってたら活躍できたのに……」って(笑)。

自信がないからがんばれるんです

— いつ自分に自信がついたんでしょう?

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人生に疲れない技術—棚橋弘至インタビュー

棚橋弘至

野球の道の断念、2度の入門テスト不合格、業界全体の人気低迷、意識不明の重体……何度も挫折と失敗を繰り返しながらも自らを「100年に一人の逸材」と呼びつづけ、新日本プロレス「奇跡のV字復活」の立役者となったプロレスラー棚橋弘至選手。その...もっと読む

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コメント

porpor35 本当に元気をもらえるなあ、棚橋さんからは。「自信がないから頑張れる」という言葉は胸に留めておきたいと思います。→ 5年弱前 replyretweetfavorite

raji_tkn 「自分ができないことをできる人のことは羨ましいし、同時に尊敬の目で見ています。そして、そうやって自分にできないことができる人を尊敬できれば、争いごとはなくなるんです。」 5年弱前 replyretweetfavorite

rage_30 ホント、語り過ぎたり見せ過ぎたりすると想像力や幻想を奪いかねないのよね。 5年弱前 replyretweetfavorite

raji_tkn 「自信がないから頑張れる」 5年弱前 replyretweetfavorite