ノーメイクはイデオロギー?!
深澤 前回の対談で話したように、女性であっても自分自身のマチズモとどう向き合うのかも大きなテーマになると思っています。繰り返しになりますが、私がフェミニストになったのは自分のなかのマチズモをいさめるためだったからです。そしてフェミニズムの団体にうまく同化できなかったのは、団体もまたマチズモを抱えていたからで、私のような人間はもっとマッチョになってしまうと懸念したからでした。
岡田さんもよく怒られるでしょう、「腐女子とはこうあるべきだ」とか。
岡田 怒られますね(笑)。
深澤 たとえ女性であってもそういう抑圧をもってしまうものなので、「男が悪くした社会だから、女にしかよくできない」という単純な二項対立でフェミニズムを考えるのではなくて、「女性でも男性でもマチズモを抱えてしまいがちだから、それとどうつきあうか」というふうにフェミニズムを考えたいんですよ。
岡田 最近、ネット上でまた「女性と社会と服装」についての話題が盛り上がっていましたよね。「女の人はどうしてわざわざ足を痛めてまでハイヒールを履くの?」という男性からの素朴な疑問に、「社会人失格だと上司に怒られたから」「オフィスカジュアルという服装がヒール前提に作られているから」「浮かない、悪目立ちしないためには履かざるを得ない」「履かないと最悪、仕事の評価にまで響く。何のために履くかと問われたら、給料を下げられないようにだ」といったガチレス、魂の叫びが飛び交った。発端となった発言や経緯はこのまとめに詳しいですが、これを読んで私も、あれこれ感想を書いたりしました。
深澤 両方読んだけど、ウーマンリブの時代から40年以上もある議論なのにまだ同じように語られるんだな、とあらためて思いましたね。
岡田 「ちゃんとした社会人」として扱われるためには、メイクをしてハイヒールを履かないといけない。しかもそれは、男性の「上着・ネクタイ着用」といった服装ルールと違って明言されることはめったになく、「岡田さん、なんで職場にすっぴん&ペタンコ靴で来るの? 仕事なめてんの? もっとちゃんとしたら?」といった同調圧力やハラスメントのかたちで顕在化する。
深澤 私はメイクもしないしヒールも履かないまま、48歳まで仕事してきたから、そういう大変さってあんまりよくわかってないんですよ(苦笑)。前回と今回の対談でもテレビ出演のメイクのまま、ここに来ました。写真撮影のある仕事は、テレビのあとに入れてもらうことが多いんです(笑)。自分でメイクすることすらできないんですよね。メイクって難しいし。
岡田 私はどうだろう、最も化粧が濃かったのは大学デビューを目論んでいた二十歳前後ですね。ヒールはどちらかというと「好きで履いてる」ことが多いです。あとは『ハジの多い人生』にも書きましたが、格好のことをとやかく言われる会社に勤めたくなかったので、リクルートスーツは買わずに普通のジャケットで就職面接に行きました。「服を理由に落とすような会社は落ちていいや、もし入社できても私とは合わないから」って。でも、すべての職場で新入社員女子がそんな態度を通せるわけではないんですよね。