1920年。無料で聴き放題のラジオが登場すると米国人は夢中になった。27年には1000万世帯と、怒濤のごとく普及したのだ。
当時のレコードの音質はラジオに負けていた。さらに29年、ウォール街で株価が大暴落。1億枚以上あったレコードの売り上げは3年後、たった600万枚に激減したという。しかし、音質改善や値下げなどレコード産業(※)はイノベーションを積み重ね、この壊滅的危機を乗り越えた。
80年後の今日、レコード産業は新たなメディア、インターネットの登場に苦しんでいる。業界団体IFPIによると2008年の全世界の音楽ダウンロードのうち合法はたった5%だ。一方、この12年間でレコード産業の売り上げは4割減った。
そんな中、復活のためのイノベーションが再び起こりつつある。08年、スウェーデンに登場した音楽が聴き放題のサービスSpotify(スポティファイ)はその一つだ。特徴は、独自開発の配信方法で、動作が軽く、違法コピーも難しい。言ってみれば、「違法ダウンロードがばかばかしくなるほど便利な合法サービス」だ。