野阿梓「花狩人」が入選第一席を射止めたのは、79年の第五回ハヤカワSFコンテスト(選考委員は小松左京、眉村卓、伊藤典夫)。ちなみにこのときの佳作が神林長平「狐と踊れ」だが、参考作「超ゲーム」の作者、浅利知輝は応募時十二歳。最近、新人賞受賞者の低年齢化が話題になってますが、この前年の第一回奇想天外SF新人賞で佳作に入った新井素子と大和眞也は十六歳と十七歳(応募時)。79年の第二回同賞佳作の牧野ねこ(牧野修)は二十歳。神林長平と野阿梓も受賞時は二十代半ばだったわけで、SF新人賞はこの頃がいちばん低年齢化していたのかもしれない。
第一回奇想天外SF新人賞の選考鼎談(星新一、小松左京、筒井康隆)誌上採録が話題を集めたのにあやかってか、ハヤカワSFコンテストも、この第五回に限っては、通常の選評ではなく、座談会形式。ホテル・ニューオータニで開かれた選考会の模様が十四ページにわたって本誌に掲載されている。小松さんが駄洒落を連発したり歌を歌ったりするのを眉村さんがさらりと受け流し、伊藤さんが滔々と理屈を言う。かと思うと受賞作「花狩人」について、「同人誌の連中のなかで、こういうナルシズム的な感覚をもった、耽美的なものは相当広がっているでしょう」(眉村卓)という発言があったりして油断できない。
一方、本号掲載のインタビューでも触れられているとおり、貴志祐介の最新長篇『新世界より』は、第十二回ハヤカワSFコンテスト(1986年)に佳作入選した「凍った嘴」(岸祐介名義)が下敷き。この回の選考委員は眉村卓、石原藤夫、伊藤典夫、今岡清(本誌編集長)。他に参考作として、のちに日本ファンタジーノベル大賞からデビューする藤田雅矢(SFマガジン誌上では「藤田恒夫」と誤植されて発表。同時に参考作に選ばれた野波恒夫と混同したためか)「一万年の貝殻都市」と、ファングループ創作研究会(北西航路)所属の野波恒夫の「生が二人を分かつとも」が選ばれているが、入選は該当作なし。つまり、「凍った嘴」がもっとも高い評価だったことになる。
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