埼玉にはペチャパイ女子しかいない!? Fカップ漫画家が真相解明!!
—— 『埼玉最強伝説』全13話完結、お疲れ様でした。
犬木加奈子(以下、犬木) 最初、お話を頂いた時は「何で私なの? 埼玉に住んでる漫画家さんはたくさんいるのに……しかもホラーじゃない?」って疑問ばかりでしたけど、描いてみたら色々な埼玉を再確認できて楽しかったですよ。今では「よくぞ私に振ってくれた!」って思っています。
—— 私が印象に残っているのは、第2話の「埼玉女子の胸は日本一ペチャパイ」問題なんですが、そもそも犬木さんは決してペチャパイではありませんよね?(笑)
犬木 これは通勤・通学で都内に出る埼玉女子が、電車内のチカンから身を守ろうとするうちにペチャパイに進化してしまったと私は考えているんです。一般的には圧倒的に長い通勤時間のせいで埼玉の女子は睡眠不足になりがちで、その為発育の遅れでペチャパイになったのであろうという仮説が巷では立ってますね。
—— 「一般的」ではないと思いますが……。
犬木 (無視して)いやいやそうではないと。埼玉に実際に住んでいる私の経験から言ってしまえば、どれだけ防御に気を配り身を守っていかなければならないか。そういった実体験に基づきこの作品を描きました。
※「平成23年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)によると、全国で一番睡眠時間(平日)が短いのは「神奈川県」、さらに全国の女子高生で一番睡眠時間が短いのは「福岡県」という結果が出ています。埼玉女子にライバル現る?
—— 「埼玉女子の胸は日本一ペチャパイ」なのは、自分の身は自分で守る埼玉女子の強さの表れということなんですね。
犬木 男に媚びる風潮が最初から無い土地という気がしますね。それはやっぱり”日本初の女医”*1 である荻野吟子や女医第2号の生沢クノ、それから日本初の女性パイロットの松本きく子*2 など、あくまでも男性が占めていた過酷な職業に、あえて向かっていった女性たちがみんな埼玉女子であるということが物語っていると思います。そのあたりは短いページ数でちょこっとしか描けなかったんですが、こんな女性がいたんだ!と、吟子やクノ、きく子に興味をもってもらえたら面白いと思います。
「これって自分の住んでる土地の話だったんだ」って、知らない話っていっぱいありますし、特に埼玉って特徴が無いって自分たちで言い続けちゃった分、わりと自分たちの住んでる土地に興味がない気がするんです。だから「それも埼玉なんだよ!」と言われて「そうだったの?」という感覚を、今回この『埼玉最強伝説』でたくさん味わって知ってほしいなと思ってます。
*1 荻野吟子は国家資格を持った日本初の女性医師として知られています。この以前から、楠本イネなどの女性医師が活躍していました。
*2 松本きく子は旧姓で、「西崎キク」としても広く知られています。NHK連続テレビ小説『雲のじゅうたん』のモデルの一人と言われています。
館林の測定方法に物申す!日本一暑いのはやっぱり熊谷だ!
—— 埼玉県熊谷市といえば「日本一暑い街」で有名でしたが、最近その座を群馬県館林市に取られてしまいましたね。
犬木 埼玉県民からすれば、あれは不公平だってみんな騒いでますよ。だって熊谷の観測所は芝生の涼しいところにあって、館林の観測所は暑いところにあるんですよ。 あとね、埼玉は暑いって思われちゃってるけど、埼玉の観測所は熊谷地方気象台だから、全国の天気予報に出る埼玉の温度は熊谷の気温であって、東京寄りの埼玉はあんなに暑くありません。むしろ東京より2度ほど低く、熊谷よりは3度ほど低いっていうのが西部地区の気温です。
—— タイトル『埼玉最強伝説』ですが、埼玉に足りないものってなんでしょうか?
犬木 鳥取県で漫画サミットがあったんですが、何よりもビックリしたのは、地方の人は自分の土地を凄く愛していること。地元意識、地元愛が強いのね。それを目の当たりにすると、埼玉はその辺がぼんやりしてると思う。他県からくる人も多いし地元に帰る人も多いし、人の出入りが激しく年中活性化してるから、地元愛ってちょっと根付きづらいのかな。 もちろんずっとずっと埼玉に何世代にもわたって住んでる人たちはきっと地元愛が強いんだと思うけど。
私も結局、幼稚園の時に東京から埼玉に引っ越して来て父も東京に勤めに行ってたから、特に埼玉とか東京って帰属意識が薄いんですよ。埼玉に住んでますってだけで、年中東京に行ってる訳だし、あんまりそういう意識がなかった。だから、地方に行って、うちの県の有名人とか皆で支える有名人とか、県民が一致団結して応援して誇ってるのを見ると羨ましいなって思う。
実はタモリは埼玉のこと好きなんじゃないか説
—— 『埼玉最強伝説』の中で「実はタモリは埼玉が好きなんじゃないか」説が度々でていますが。
犬木 これは間違いないと思うんです。どうも年中ゴルフをやりに埼玉県に来ているらしいし、なんたって、飯能銘菓の四里餅*3 を買いに通っていたという事実。実際にこの漫画を描いている時に3回も四里餅を買いに行ったんですよ。でもすぐ売り切れちゃってて、3回目に行ってようやく買えたんです。そんな人気の四里餅をタモリさんは何度も買っているらしいんです!すごくないですか?
*3 四里餅:埼玉県飯能市の銘菓で、「四里」の焼き印が入った小判型の大福。
—— そうですかね?(笑)
犬木 そんななかなか買えない四里餅だから、恐らくタモリさんも何回か失敗してるはず。何度か通って、この時間なら買えるって時間帯を狙って買いに行ってるはずなんです!
—— はあ。
犬木 それぐらい足繁く通ってるってことは、それだけ埼玉に来ているし、これだけ埼玉に来ているってことは「埼玉が好き」ってことじゃないですか! もう誰が何と言ったってタモリさんは埼玉が好きです。他県民のみなさんすみません。タモリさんはこの「ダサイタマ」に年中足繁く通っております。
—— でも「ダサイタマ」ってタモリさんが言いだしたんですよね?
犬木 ええ、まあ……。第6話で描いてますが「ダサイタマ」ってそもそも誰が言い出したのか調べたら、1981年にラジオで*4 タモリさんが言ったのが発端でした。それが広まっていつからか「ダサイタマダサイタマ』って他県民の人たちから当たり前のように言われるようになって、自分たちでも何気なく「ダサイタマ」って言っちゃって。
*4 「1981年にラジオで~」:wikipediaによれば、1981年放送当時の『タモリのオールナイトニッポン』で『なぜか埼玉』(曲:さいたまんぞう)が取り上げられ、その後『森田一義アワー 笑っていいとも!』内で「ださいたま」が使用されて世間に広まったとのこと。
—— タモリさん全然埼玉好きそうじゃないじゃないですか!
犬木 いやいやでも足繁く通っているからこそ、「ダサイタマ」って言えるってことですよね。いろいろと埼玉のことを調べていくと、えっ?またタモリさん?っていうぐらいネタが出てくるんです。でも結果としてはタモリ様様ですね。本当にありがたいことでございます。タモリさんに馬鹿にされるなら本望です。どうぞ馬鹿にしてください。馬鹿にしてくださればしてくださるほど埼玉の知名度が上がるので。むしろここのところ馬鹿にしてくれないのでちょっと寂しいくらいです。
—— 実際「ダサイタマ」って他県民に言われることに対して、正直、埼玉県民はどう感じてます?
犬木 地方から出てきてまず埼玉にきたら絶対都会だ!って思うと思うんです。そりゃあ東京様と比べたら何もないです!と言うのが埼玉の謙虚なところですが。でも、他県とは比べてほしくない。他県に田舎とか言われると、冷静に考えると段々腹が立ってくるんです。
—— そんなに怒ることですか……。
犬木 だって、昔は確かにって認めてたんですが、結局それって埼玉県民の頭の中には常に東京があったからでしょう。日本中誰も文句が言えない首都、東京様を基本に置いて考えてるからなんですよ。その基本にも置かれていない他県がなぜ埼玉をバカにするのかが分からない。でもまあ埼玉県民は「2番手は埼玉ね!」っていう意識が根底にあるんですよ。東京の次は埼玉だと思ってるんで(笑)。
埼玉は本当に「ダサイタマ」なのか? 本当の埼玉がここにある?? 『埼玉最強伝説』本編と、インタビューの後編は9月4日掲載予定!!