この記事に興味を持っていただいたあなた。
ありがとうございます。
いきなりですが、ちょっとだけ想像してみてください。
もし、あなたが本屋で働く書店員だったとします。
20年前に出版された本を読んで、心から感動しました。この本をもっと多くの人たちに読んでほしいと思った。でもこのままでは売れそうにない。
あなたなら、どうするでしょう?
もしあなたが高級デパートで働いているとします。
普通の倍以上の値段の缶詰を仕入れたけれど、ぜんぜん売れない。早く売りさばかないと賞味期限が来てしまう。でも安売りすると店のイメージが壊れてしまうのでできない。
あなたなら、どうするでしょう?
どちらも実際にあった事例です。
いずれの場合も、自分がPOPに書いた「言葉のチカラ」でその問題を見事に解決しました。
もちろん「言葉のチカラ」が発揮されるのは、POPだけではありません。
・まったく無名だった少女が、ネットの写真に添えられた1行の言葉でテレビCMのオファーが殺到した。
・老舗食品メーカーが、苦戦していた自社商品の最大の欠点を1行にして訴求したら、同じ商品なのに再び売れてシェアを取り戻した。
・テレビ通販でMCが商品の新しい使い方を付け加えただけで、その商品の売上が急増した。
・あるお菓子メーカーが、プロスポーツの大きな試合中にツイッターって発した1行が何億円もの効果を生み出した。
・準備に準備をかさねたCMのキャッチコピーが急遽使えなくなり、担当者がとっさに考えた1行に差しかえたら大ヒット。1年分の在庫が1週間で売り切れた。
・それまであまり価値がないと思われていた魚に、新しい名前をつけて売ったら連日大行列ができる超繁盛店になった。
・知事がとっさに語った機転のきいた1行が、のちにその県に莫大な経済効果をもたらした。
・ツイッターで女子学生がつぶやいたひと言で、無名ブランドの下着が話題になって飛ぶように売れた。
このように、たった1行の言葉で、それまで売れなかった物が、爆発的に売れていくことは実際にあるのです。
「人」と「お金」を集める最大の武器
「1行のチカラ」が発揮されるのは、販売の現場だけではありません。
あなたも、きっと感じているでしょう。さまざまなビジネスの現場で「1行のチカラ」がますます重要になってきていることを。
ビジネスは、あなたが働きかける社内外の相手が、本気になって動いてくれるかどうかで決まります。働きかける時、人は言葉を使います。その言葉で、相手の心に火をつけて本気にすることができれば、多くの仕事は前に進むのです。
ネット社会になり情報が飛躍的に増加した現在では、最初の1行で人をひきつけることができなければ、なかなか中身まで読んではもらえません。まずはタイトル、商品名、見出し、キャッチコピーなど短く的確な1行で、相手の心をつかむ必要があります。そうすることで初めて、相手を本気にさせ行動に向かわせることができるのです。
これは書き言葉に限りません。話し言葉でも同じです。プレゼンは印象に残るフレーズがあるかどうかが採用の決め手になります。会議でも、だらだら説明するよりも、ひと言でバシッと心に残る言葉を発することができる人の方が評価されます。
リーダーシップも同様です。部下に長いお説教しても誰も聞いてくれません。短く的確な1行で指導できてこそ、人はついてきます。経営者であればなおさらです。業績なあげているトップは、1行の短い言葉で語ることが得意な人が多いからです。
会社やお店も、ひと言でその特徴を言えなければ、これからは生き残っていくことがむずかしくなっていくでしょう。個人にしてもそうです。独立して自分の名前で勝負していく人は当然として、会社員であってもそうなっていきます。
本書では、相手の心に火をつける1行を書いたり話したりできる能力のことを、「キャッチコピー力」と呼ぶことにします。キャッチコピー力は、コピーライターの専売特許ではなく、むしろ普通のビジネスパーソンにこそ必要な能力です。
キャッチコピー力があれば、商品を売ることもできるし、企画を通すこともできるからです。
「人」と「お金」を集める最大の武器が「キャッチコピー力」なのです。