柴那典(以下、柴) 今回「心のベストテン」が、なんとフジテレビの深夜番組になりました。
大谷ノブ彦(以下、大谷) いやあ、ついに始まりましたねえ。みなさん、ありがとうございます!
柴 そういえば、大谷さん、その足どうしたんですか?
大谷 これ、骨折したんですよ。前回「星野源、高橋優……現代シンガーソングライター論」で、ミスチルの桜井さんにほめられた話をしたんですけど、あの後、桜井さんとGAKU-MCさんがやってるウカスカジーのイベントでDJをすることになったんです。
柴 ほうほう。
大谷 で、DJやりながら「スペシャルダンサー、MC-GAKU!」って呼び込んだんですよ。そしたらGAKUさんが桜井さんを連れてきて、ステージで2人とも踊ってくれて。
柴 それはすごい!
大谷 で、その日にスペシャルゲストで来てたトライセラトップスの和田さんがいたんですけど、俺も調子に乗って、「すげえ格好いいバンドを紹介します、トライセラトップス!」って言って「Raspberry」をかけたんですよ。
柴 おお!?
大谷 そしたら、トライセラトップスの和田さんもステージに出てきて歌ってくれて! で、「これはイケる!」って思ってミスチルの「Innocent World」をかけたんです。そしたら桜井さん、脇にハケちゃって。
柴 あらら。
大谷 「こりゃやっちまった、ヤバいことした……」って思ってたら、実は脇で桜井さんが和田さんに「これがDJダイノジだよ、すごいだろ」って、俺らのこと褒めてくれてたらしくて。でもその後、「あれ? これ俺の曲だ」って気付いてくれて、桜井さん、マイク持ったままステージに戻ってきてくれたんです!
柴 すごい展開!
大谷 で、「Innocent World」一緒に歌ってくれた。もう、俺、テンション上がっちゃって。その場で「やったー!」ってジャンプしたら、着地したときに骨折しました。
柴 ははは! どんだけ跳んだんですか!
大谷 20センチしか飛んでないのに(笑)。
柴 あ、ニュースにもなってますね。「ダイノジ大谷、左足小指骨折 ジャンプ着地に失敗」。
大谷 でもあれはすごい経験でしたね。桜井さんが僕らのDJに参加してくれた。「音楽を楽しんで、みんなで共有しよう」というところに共鳴してくれたのは、ほんとにすごく嬉しかったです。
セカオワとDeNAは「ディスニーランドがライバル」
柴 そういうわけで、早速今日のテーマに行きましょう。セカオワが体現している「架空の時代のJ-POP」という話。
大谷 SEKAI NO OWARIはついに世界進出が始まりましたね。新曲の「ANTI-HERO」も素晴らしかった。
大谷 それに、観ました? 彼らのこないだのライブ。
柴 日産スタジアムでやったワンマンライブ「Twilight City」ですね。演出が壮大すぎてとてつもないことになっていた。
大谷 いまやもう街ですからね。日産スタジアムに巨大な街を作っちゃった。初めてロック・イン・ジャパン・フェスティバルに彼らが出たとき、僕らの楽屋までCDを持ってきてくれたんですよ。それがずいぶん遠いところまで行っちゃった。
柴 僕も彼らがまだインディーの頃、羽田空港の近くにライブハウスを作っているときに取材してましたけど、その頃はこんなことになるなんて思いもしなかった。
大谷 僕としては、彼らは途中で方向転換したような気がするんですよ。最初はBUMP OF CHICKEN以降、RADWIMPS以降の、観念性が高い、自意識をテーマにした歌詞世界だった。でも今は100%ファンタジー。
柴 そうなんです。しかも転機はハッキリしていて。それは彼らが「スターライトパレード」を出して初の武道館公演をやった時だったんです。
柴 その時のインタビューで、Fukaseが明確に「これからは方向を変えていく」と言っていた。で、「セカオワはこの先どうしていくんですか?」ってきいたんです。そしたら「僕らのライバルはディズニーランドです」って。
大谷 マジですか!?
柴 2011年の段階で、意識的にファンタジー方向に舵を切ったわけなんですよ。しかも、自分たちのライバルは他のバンドじゃなくて、ディスニーランドなんだって。
大谷 それ、横浜DeNAベイスターズのスタッフと同じこと言ってますよ。ベイスターズの人も「ライバルは巨人や阪神じゃありません、ディズニーランドです」と言っていた。ディズニーランドと横浜スタジアムは東京駅から同じ距離なんですって。そこで家族で楽しめるコンテンツを沢山用意して、とにかく横浜スタジアムの環境を快適にした。
柴 なるほど。確かに発想は近いですね。
大谷 それを聞いて、お笑いも、バンドも、こういうことをやんないといけないんじゃないの?って思ったんです。特にお笑いのライブはマニアみたいな人がジーっと観てる感じで。それもいいんですけど、とにかくその場の雰囲気を楽しくして、その中に入っていけるようにすることも大事なんじゃないかなって。
柴 そうすると参加型の楽しみ方になりますからね。
大谷 そう。ここ数年でハロウィンが盛り上がるようになったのも同じ理由ですよね。みんな自分の写真をSNSに上げるようになった。だから、はしゃいで写真を撮ってる。
柴 そうやって一体感を楽しでいる。
大谷 そういう状況を全部取り込んでいるのが今のセカオワのライブだと思いますね。
等身大の共感から、架空のファンタジーへ
柴 僕の仮説では、実は時代の切り替わりのタイミングがあったと思ってるんですよ。それが2010年のことだったと思うんです。
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