「僕、今年は英語学校やろうと思っていたんです。だから仲間に入れてもらえませんか?」
「………。」
僕らは顔を見合わせて黙ってしまった。Mさんはいったいどういうつもりなのだろうか?
「お金はあまり出せませんが、マーケティングなどでは戦力になれると思います」
それはまあそうだろう。しかし、マイナスの部分も考えなくてはならない。この人を仲間に入れることのプラスとマイナス、いったいどちらの方が大きいんだろうか?
まず、いったい会社に船頭が3人も必要なのだろうか? どう考えても不要だ。2人だって難しい局面が出てくるだろうに、わざわざそれをより難しくする必要がない。
「出資はどのくらいできるんですか?」
「えーと。あまりお金はないので、多分せいぜい1割ぐらいだと思います。」
「………。」
もしも、非常な貢献が見込める人なら、別にたくさん出資できなくてもいい。
Mさんは果たして、「非常な貢献」ができるのだろうか?
利益がでない時期に何ヶ月もタダ働きできるだろうか?
無収入の時期を支えるだけの蓄えがあるだろうか?
これまでの貯蓄を出資で吐いてしまったら、何で暮らすつもりなんだろうか?
また、二言目には「フィリピン人は……」と、上から目線なのが気になった。
それから「一緒にやりたい!」という割に、他人事のような態度も気になった。僕がJセンターで交渉している時に、横に張り付いて電卓を叩いてくれたのは中西さんであって、Mさんではない。
とはいえ、今回1週間は快くあちこちに連れていってくれたし、そもそも彼がいなかったら僕と由木、中西組は出会うことがなかったのだ。そう思うと、あんまり無下にするのも悪いような気がする。最初にある程度しっかりと上下関係をひけば、やれなくはないかな……。