A.いまから30年前、昭和の時代、しかも九州。照れと体面から、クッキングパパぶりを隠すしかなかった。カミングアウト後は、超のびのび!
クッキングパパ、荒岩は1985年の連載開始当初、自分が料理をする事を会社ではかたくなに隠している。毎日の完璧なお弁当は、誰もが荒岩の妻が作ったものだと思っているようだ。荒岩の弁当に異常な執着を示す上司の東山常務に弁当に入っているひじきを絶賛され「食べかけの弁当でもいいからくれ」と言われたときには「夕食に"うち"のやつにひじきのフルコースを作らせるので食べに来てください」と提案するも、妻の虹子の帰宅が遅くなり、訪れた東山常務に「奥さんは?」と尋ねられ「料理を作ってついさっき用があると出かけましてね、よろしくといっておりました」などと相当に苦しい嘘をつく羽目になる。
残業中、息子に食事を作るために中座するところを部下の田中に突っかかられ、
苦肉のごまかし。まだごまかし慣れしていない。 ©うえやまとち/講談社
普通なら家庭内で誰が料理していようと、喋らなければ他人の知ったことではない。しかし荒岩は、料理が好きすぎるあまりに、どうしても人にふるまいたくなる気持ちを我慢できない性分なのである。そこで、会社などで同僚たちに料理をふるまうときは、荒岩が料理をする事を知っているただひとりの部下、木村夢子を協力者とし、彼女が主に作り自分は手伝っただけということにしているのだ。夢子が作ったと言えないときは、どうしているのか……というと、咳払いである。咳払いというベタな方法でごまかし、周囲もコロッとごまかされていだまされる。
毎回こんな感じでごまかしていく荒岩。 ©うえやまとち/講談社
2015年の我々から見れば、荒岩がなぜこんな面倒なことをしてまで必死に料理をすること好きを隠すのか謎である。現在では料理をする男性はまったく珍しくない。不景気もあって、自作の弁当を持って通勤する若い男性も少なくはないだろうし、料理の得意な夫(やお父さん)なんてなんと羨ましい!!と思う女性も多いだろう。